牛を育てる高校生

第3回 2012年11月4日放送

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再生時間:14分00秒

※番組中の応募や告知、日程等は2012年のもので既に終了しています

乳牛の世話をする京都府立農芸高校の生徒
乳牛の世話をする京都府立農芸高校の生徒-

赤い屋根が印象的な牛舎
赤い屋根が印象的な牛舎

昨年ヒットしたコミック「銀の匙」(荒川弘作)は、
都会から北海道の農業高校に進学した主人公が、
動物と自然に囲まれて成長する、青春ストーリーです。
じつは丹波にも、このコミックのような高校があります。
それが京都府南丹市にある、京都府立農芸高校。
今回は、農産動物バイオコースで、
牛を育て、牛とともに成長する高校生たちを、
同コース出身のレポーターが紹介します。

朝5時半からの早朝実習

櫻井:おはようございます。ただ今、朝の5時半です。農芸高校で牛の世話をする畜産とバイオコースの朝は、こんな朝から始まります。(牛舎の音、「おはようございます」のあいさつ)懐しいなぁ、この厩舎の匂い。今からある授業は早朝実習といって、和牛の寝床でもある牛舎を掃除するところから始まるんです。(「はい、ちょっとどいてぇ〜」「はい、脚上げてなぁ。よーし。」)ここでは、牛一頭一頭に名前がついています。子牛が生まれると、生徒が名前をつけます。いわゆる、名づけ親になるのです。僕らも和牛に「スズラン」という名前をつけました。毎日世話をしている生徒には牛の見分けがつき、その日の牛の健康状態や機嫌までわかるようになるんです。少し話を聞いてみましょう。

——ここには18頭の和牛がいるけれど、どの子がいちばん可愛いですか?

男子生徒A:「高幸平」という牛です。「高幸平」は乳牛として育てられてきたんですけれど、最初は人間恐怖症ですごく恐がりだったんですけど、育てられてきているうちに、徐々に人間に慣れてきて、毛の手入れとかしている時に、すごく僕たちに寄り添ってきてくれるので、やっぱりそこがいちばん可愛いと思いますね。

乳牛飼育でやっちゃった大失敗!

櫻井:ただ今8時55分。早朝実習から3時間経ちました。そろそろ1時間目の授業が始まるようです。(先生の声)この日の1時間目は総合実習です。この実習は畜産、バイオコースを選択した生徒が、別れて乳牛と和牛の牛舎に行きます。乳牛は牛洗いや餌やり、和牛はブラッシングを行います。なかでも牛洗いをすることは、牛がきれいになり、また病気の発生を抑えるという効果があるからです。生徒はこの授業をどう感じているのでしょうか。

——この授業で楽しいところはありますか?

乳牛への餌やり
乳牛への餌やり

女子生徒A:牛洗いです。「ティム」という牛がいるんですけど、性格がとても優しくて(牛を洗う場所まで)運んで行くときに、めちゃくちゃ楽しいです。

——やっちゃった失敗って、ありますか?

男子生徒B:牛を脱走させてしまったことがあります。もし牛が牛舎から出て人に害を与えたり、国道に出て車と接触事故を起こしてしまったらどうしようという気持ちが強かったです。それですぐに牛全頭を捕まえて檻の中に入れました。

牛は家畜ではなく家族です

櫻井:午後からは主に座学です。放課後は部活動に移ります。農芸高校で、とくに牛が大好きな部員が集まる畜産部へとお邪魔しました。畜産部は主に乳牛の飼育管理を行っています。彼らは1年365日乳牛と一緒です。

——えっ!?土日もないんですか?

櫻井:そうです、お正月も家ではなく乳牛と一緒に過ごします。

——いやぁ、ほんとうに牛が好きじゃないとできませんねぇ。

取材に応じてくれた生徒さんたち。カメラを持つのは櫻井レポーター
取材に応じてくれた生徒さんたち。
カメラを持つのは櫻井レポーター

櫻井:はい、なぜ彼らは乳牛と生活することを決めたのか、気になりませんか? 乳牛と生活する彼らにとって、牛はどんな生き物なのか聞いてきました。
女子生徒B:私にとって牛とは、ただ単に動物が好きというのと違って、また牛が好きという感情があって、自分のなかですごく大切なものに位置づいてますね。
男子生徒C:僕にとって牛は家畜ではなく、家族です。牛と対等な関係を築けるようにこれからも実習を頑張っていきたいと思います。

——家畜ではなく、特別な存在なんですね。みんな大好きなのが伝わってきました。

櫻井:ところで最後に、こんな感動エピソードを話してくれました。
男子生徒D:大きい牛が子牛を出産するときに、僕たち生徒と先生たちが立ち合い、子牛を中から引っ張り出したときに、子牛が息をしていなくて、生徒と先生たちが人工呼吸をしたり、みんなでなでたりして、「生きろ、生きろ」と励ましていました。それをずっと繰り返していたら、子牛が息を吹き返してくれて、すくすく元気に育ってくれました。これが僕の、感動のエピソードです。

出演

  • 京都府立農芸高校生の皆さん
  • パーソナリティ:佐藤遥佳
  • レポーター:櫻井大督

制作スタッフ

  • 企画・ディレクター:櫻井大督
  • 音声収録:櫻井大督
  • 編集:上田久人、福本愛子

リスナーからのメッセージ

亀岡市/太田広

牛は「なつかない」と聞いていましたが、そんなことはないのですね。放送にあったように24時間寝食を共にすることによって受け入れられるのでしょう。やはり育ての親なのでしょうね。家畜の世話は臭くて、汚くて、足で蹴られる危険の3Kが揃っています。その点、豚の方は犬のように寄ってきて人懐こい反応をします。
誰もが敬遠する仕事を進んでやっておられる学生さんに敬意を表します。
私は亀岡市第2市場「牛豚屠畜場」で働いています。屠畜を待つ1日しか世話をしませんので、とてもとても放送されたようにはいきません。
京都は鹿児島、宮崎を産地とする牛が多いです。京都の牛は京都丹波牧場、亀岡牛は生産者から入荷します。ひょっとしたらこちらで対面しているかもしれませんね。私の仕事は屠畜の方で生産者さんには申し訳ない気がします。ただ、嫌な仕事でも誰かがしないことには成り立ちませんからね。京都の人たちのために、みなさん頑張って牛を育ててください。
今回の企画は、その先を知らなかった私にとって、とても感動しました。またいろいろと面白いお話を期待しています。次回の放送を楽しみにしています。

亀岡市/こももさん

農芸高校といえば農業というイメージでした。
毎朝早起きして牛のお世話をされている学生さんには脱帽です。想像もつかないほどの体力と精神力がいると思います。
動物と接することは心も豊かになるし、人間同士では得られない癒しも得られるはずです。出産や死に立ち会うお話を、ラジオ越しにきくだけで朝から感動してしまいました。
若いうちからそういう経験されているからきっとどんなことでも乗り越えていける度量がつくんじゃないでしょうか。
牛に限らずどんな生物でも、命と向き合う事がいかに人として大切なことかを改めて考えさせられるいいお話でした。

東大阪市/まさはしあつこさん

Do!たんばラジオ さま
11月4日の放送の感想です。丹波に畜産や酪農の高校があるんですねぇ。(そう言えば、大阪にも農芸高校があって、畑や牛などの見学に行ったことがあります。)
乳牛の世話は、年中無休ということで、考えてみれば、そりゃあ、生き物の世話ですから「お休み」なんてないですよね。
授業前の早朝実習、たいへんそうですけど、そこから学ぶものがとても大きいようですね。命に触れる、改めて、これが今の社会には欠けているのかなぁと思いました。
死んだ牛を前に、2年生はその死を受け止めている、というのが印象に残りました。
牛を育てることで、実は牛に育てられている、命って、響きあって、ともに育ち合っていくもののように思えますね。
私も、子どもを授かり、育てる経験を与えられたことで、実は何倍も、子どもたちからプレゼントをもらってる実感があります。
各々が育ち合えるって、ステキですねぇ!

番組制作スタッフからのメッセージ

番組の企画、ディレクター、レポーターを務めた1回生/櫻井大督

企画力も伝える力もなかったと反省しています。制作は僕たち学生が骨格をつくり、市民スタッフの方々が脚色をするという方法で進められ、企画から脚本、取材、編集と、すべてのプロセスで、市民スタッフの方々との会議を重ねました。先生方の意見を聴きながら、5回も6回も手直しした脚本が、市民スタッフとの会議で、また修正が加えられるといった大変さもありました。番組は農芸高校の単なる紹介になってしまい、残念でしたが、収録が終わって重い責任感から解放されたときには、ほっとしました。