心に残る風景–アレックス・カー氏に聞く亀岡の景観

第7回 2012年12月30日放送

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再生時間:14分00秒

※番組中の応募や告知、日程等は2012年のもので既に終了しています

アレックス・カーさんのご自宅でインタビュー風景
アレックス・カーさんのご自宅でインタビュー風景

『美しき日本の残像』や『犬と鬼』の著者として知られる、東洋文化研究者のアレックス・カーさん。
日本人の自然観や伝統文化、地域の景観を愛し、1977年以来、35年にわたって亀岡に在住するアメリカ出身のアレックスさんにとって、亀岡のまちはどのように映っているのでしょうか。
市内の、矢田天満宮の境内にあるお住まいを訪ねて、亀岡のまちのこと、これからの課題をうかがいました。

亀岡のこれからの課題

亀岡に住んで35年になるというアレックス・カーさん
亀岡に住んで35年になるという
アレックス・カーさん

直野:亀岡は京都のすぐ隣りなんですが、京都とはまた違った独特の雰囲気を備えていると思います。私が亀岡で大好きな景観は、城下町の情緒ある景観です。2003年の『「日本ブランド」で行こう』(アレックス・カー著、ウェイツ)という本の中でカーさんは、城下町だった亀岡は味のあるまちだ、とおっしゃっていました。それではインタビューをお聞きください。
カーさん:城下町だから、やっぱり豊かになる。それで結構つくりのきれいな家が自然にできたと思うんですね。まぁ残念ながら、亀岡市はあまり景観に力を入れてなくて、完全な形としては残ってないんですね。日本の地方都市はほとんど同じような運命にあると思います。とくに、戦後できたプレハブ住宅は寿命が短いじゃないですか。だから10年、20年したら建て替えなきゃいけなくなる。亀岡の次の課題はね、そのときに、少なくとも昔の「味」のある外観で調和をとるように指導すること。そうすれば、少しずつ取り戻しができるんだよ。他の町ではそういう試みは始まっている。ヨーロッパのきれいな町が残ったのは、町を愛しているから。自分のきれいな家のすぐ隣りに変な建物ができそうだったら、住民たちが文句を言う。許さない。やっぱりそこまで町に対しての愛情がなければ、きっと景観法もできないし、どんどん崩れていくでしょうね。

元気なままで、将来のことを考えてほしい

聞き手は亀岡在住4年目の直野レポーター
聞き手は亀岡在住4年目の
直野レポーター

カーさん:僕の経験では、不便で大変な所にある田舎は、過疎とか高齢化とかでどん底なんです。そのためどうにかしなくてはいけないという危機感がある。亀岡は、そういう意味では、まあまあうまくいってるベッドタウンですから、危機感もなければ別に困ったこともない。そういう町は逆にいちばん救われないんだよ。四国の祖谷とか小値賀とか、明後日行く奈良の十津川にもプロジェクトがあるんだけども、そのような所は、「死ぬか生きるか」ぐらいのところまで来てしまったので必死なんですね。10年先になると、十津川、祖谷、小値賀は、亀岡・京都よりずっときれいに残ってると思います。ちょっと逆説的なんだけど、危機があったから(笑)。でも、危機になるまで待ってなきゃいけないなら、それは残念なことだと思います。べつに亀岡が危機に陥ってほしいというわけではないし、元気なままで、ちゃんと先のことを考えていただけるといいんだけどね。

亀山と城下町を擁する理想的な盆地・亀岡

直野:(亀岡の音を使った音楽 作曲:岡崎宏樹)亀岡にはこれからも残したい美しい風景があって、そこには美しい音が響いている気がします。
カーさん:亀岡は、これほど完璧な盆地ってないくらいね、真中に亀山がぽつんとあってね、亀山城ができた。盆地としての理想的な形かもしれないね。京都から亀岡に来る初めての客は、必ずトンネルを何回か通ってくる。トンネルを抜けるたびにぱっと川が見えて、またトンネルに入る。神秘的じゃないですか、何回通っても。
直野:私は、トンネルを抜けて馬堀の景色が広がった瞬間、あぁ、帰ってきたんだな、という感覚になります。亀岡のどんなところに関心があるのか、聞いてみました。
カーさん:山間部を車で走ると、立派な門構えのすばらしい農家があるじゃない。あのような家をきちんと直したら、宿泊施設やイベントスペースにもなる。いろんな使い方があるんですね。もったいないという思いでいつも走ってるんだよ。
直野:カーさんは亀岡の家がとても好きで、ここを起点として、ずっと住んでいきたいとおっしゃっていました。

アレックス・カーさんの著作『犬と鬼ー知られざる日本の肖像』 講談社、2002年
アレックス・カーさんの著作『犬と鬼ー知られざる日本の肖像』 講談社、2002年

出演

  • アレックス・カーさん(東洋文化研究家、亀岡市在住)
  • パーソナリティ:曽我裕貴
  • レポーター:直野祥子

制作スタッフ

  • 企画・ディレクター:直野祥子、岡崎宏樹
  • 音声:曽我裕貴
  • 編集:福本愛子、上田久人、岡崎宏樹
  • スチル撮影:津村朝光

リスナーからのメッセージ

3人の子育てママ

みなさんの顔と放送室の風景を思い家族で聴いてます。この番組がきっかけで先日亀岡から美山へ立ち寄り、楽しんできました。田舎の美しい原風景がいつまでも残ってほしいと思いました。

番組制作スタッフからのメッセージ

取材に同行し写真撮影を担当した4回生/津村朝光

番組中に流された岡崎先生の音楽を聴きながら、「亀岡の歴史や景観を廃れさせるのはもったいない。亀岡には亀岡の良さがある。まずはそれを、地元の人たちにも再確認してほしい」と感じました。

市民スタッフ/豊田知八さん

自分自身勉強したいと思い参加しました。学生の視点や市民が見過ごしているところが発見できた。ラジオで表現することはすばらしい。伝える、描写の仕方の難しさ。奥深い視点に気づかされました。

市民スタッフ/竹内博士さん

学生さんたちとともにラジオ番組を制作して、「生の声」の威力を感じています。活字で伝えようとすると長い文章になるが、「生の声」は、たった一言でも、その言葉には体温があると感じました。